某C大学、11号館、09:00 JST。
穏やかな春の日差しから、厳しい夏の日差しに変わり始める季節。
授業まで20分もあり、静かな3Fロビー。
...イヤ、なにやら騒がしい。
「あ、これ、先週分のToHeartね。」
...何の話をしているんだよ、こいつら。
そこに集まっている3人、具体的にはM實、K島T、そして、Fukapon。 こいつらは、高校が同じだった。 付属校から大学へ上がってきたわけだ。 大学での学部は違えども、校舎は広くとも、同じ大学へ上がってきた。 そんな彼らは、生活習慣まで持ってきたのである。 アレな番組の録画を忘れれば、友達が確実にフォローしてくれる。 アレなCDを手に入れれば、発売日の翌日には友達の手に渡る。 そんな生活を大学でも続けるためには、人気のない静かな朝、3人が集合する必要があった。 愛する芹香お嬢様の美麗な姿入りビデオを受け渡すために。 イヤ、彼らにとって、最高の生活を維持するために。
しかし、彼らの集まりは致命的な問題点を内包していたのである。 そう、名前がない。 これではろくでなしロボットのくせに名前のある、マルチことHMX-12以下の扱いではないか。 由々しき問題である。 そこで3人は考えた。 それは嘘、思いついた。 アレなことための、アレな集まりを「会合」と名付けようと。 もうお気づきであろう。 "project KAIGO" の "KAIGO" は「かいご」ではなく「かいごう」と読む。 そして、その意味は「会合」なのである。
その後も精力的に会合を重ねていった。 付属校からのアレな友達も1人、2人と加わり、大学からの新メンバーも加わった。 全ては順調、と言うよりは、ただ単に何も起こらずに過ぎていったのである。 内輪であるから、波も立たず、平和だったのだろう。 しかし、そんな状況に転機が訪れた。 1999年12月1日、Fukaponが激動への第一声を発する。 「今年の流行語大賞、流行してないだろ。納得のいくローカル流行語大賞でも選んでおく?」 恐ろしい一言だった。 会合メンバーの全会一致によってFukaponのバカな提案は可決。 止めろよ、お前ら。 そんな気持ちもどこかにありながら、ローカル流行語大賞が選考されることとなったのである。 もちろん、流行語大賞を選考するのならば、世界に向けて発表の必要もある。 会合に参加中の面々はそう考えた。 ...ウェブだ。 ウェブならば、瞬時に世界へと発表できる。 受け取ってもらえるかは別だけど。 その素晴らしい案が実行されようとした瞬間は、再び大きな問題にぶつかる瞬間だった。
ウェブサイトおよび、団体の名前がない。 これではろくでなしロボットのくせに名前のある、マルチことHMX-12以下の扱いではないか。 マルチはいらない。 欲しいのは寺本たんぽぽ。 イヤ、違う。 リフレインはいらない。 欲しいのは名前。 ...面倒だから、Fukaponに任せちゃえ。 会合メンバーは、その重大な決定権を全て、Fukaponに与えることにした。 ウェブページを書くのは彼だからだ。 Fukaponは困った。 M實とK島Tはホントにいい加減な奴らだ。 待てよ、あたしもいい加減なんだよね...。 「会合」のウェブサイトだから "project KAIGO" あたりで良いだろう。 そんな妥協的なムードで満ちあふれた瞬間こそが、 "project KAIGO" 誕生の瞬間である。 "project KAIGO" の名前は、サイト名だけでなく、団体名としても使用することにした。 それはもちろん、会合メンバーに新たな名前を思いつくほどの頭脳がなかったためであることは言うまでもない。