project KAIGO
誰にでもわかるかどうかがわからない
project KAIGO 入門

第二章 〜 制服が欲しいから

可愛い子には服着せろ

 project KAIGOのメンバーは、年が明けた後に考えた。
 今年はミレニアム、きっとクリスマスは大騒ぎになる。 それまでにパートナーの1人や2人、ってゆーか、1人で良いからいないと、悲しいかも...。 前年のクリスマスは、コミケに参加のFukaponを筆頭に、負け組ばかり。 ベンチャービジネスを起こしてもいないのに負けられるあたりは、天賦の才と言えよう。 そんな彼らはさらに考えた。 今年は、可愛い子が必要だ。 それには、制服だ。 エプロンドレスに限る。 名雪制服も良いぞ。 入手にはお金がかかる。 ポケットマネーはない。 どこからかサクッと調達しよう。 そうだ、大学からいただこう。

 年末年始に、高校時代からの強力な同志であるT澤がproject KAIGOに合流。 その危険さは最高潮に達していた。 そんな中、聖断は下される。 「project KAIGOを、某C大学でサークル化、部費で制服を買う」 このようなどこからともなく現れた決定に異議を唱えたものはいなかった。 どの制服を買うべきか、争うことがあったとしても...。 さぁ、4月の入学式には、新入部員の勧誘が必要だ。 そのために、project KAIGOに残された時間は僅か。 サークル名を決め、サークル広報誌への掲載原稿を作成しなくてはならない。 さらに、早めにサークル申請書類の完成も必要だった。

 しかし、当時のproject KAIGOには一つの問題があった。 学生業は長期休暇中に入り、連絡を取れないメンバーが存在したこと。 今でこそメールという便利なものがあるが、当時メールを扱えたのは僅かに4名。 その4名でメーリングリストを構成し、サークル名選定や広報原稿作成を行うことになった。 ...アレな4人だった...。 テレビアニメ版『デ・ジ・キャラット』が一世を風靡し、誰もが3話で観るのをやめていた年末。 メンバーの頭には、デ・ジ・キャラットのことしかなかったのである。 って、4ヶ月もデ・ジ・キャラットを引きずっていたのか。 バカな面々である。 まぁ、そんなバカな面々は、サークル名をなんとなく「デ・ジ・キャラット」に似せたかったのである。 ...「デ・ジ・会合」なんてのはどうだ。 ......実は「デ・ジ・会合」が先行してメーリングリストの名前になっていたことは秘密だ。 そう、メーリングリストの名前をそのまま流用したなんてのは絶対秘密だ。 そんな秘密は、目からビームで一気に焼き払って決定。 広報原稿作成も、その調子でいい加減なものを作って作業完了。 あとは、入学式を待つのみとなった。

 新歓コンパ。そのハードルの高さを知ったのは、デ・ジ・会合を起動させた彼らだった。 新入生が来なくては、新入生歓迎も何もない。 当然のことではあるが、そのことにちゃんと気付けるのは、新入生が来なかったときであろう。 そう、デ・ジ・会合に新入部員はいなかった。 宣伝用のチラシは完璧だった。 読み応えのあるM實、K島T制作の配布広告、宣伝欄を乗っ取ったFukapon制作の似非教科書購入用紙。 素晴らしいアイデアに、誰もが驚嘆したはずである。 宣伝人員数も問題なかった。 project KAIGOが誇る、最高の人材をほぼ全員投じたのだ。 その質の高さは、どこのサークルにも負けなかったはずである。 宣伝ブースも最高だった。 K島Tによって確保されたブース位置は、老舗サークルのコネでも入手できない一等地。 その位置は、メンバーの期待を大幅に上回っていた。 なのに、なぜ。 その答えを知りながらも、デ・ジ・会合のメンバーは悩んでいた。 そう、現実を知りたくなかったから。 彼らの最大の問題、それは彼ら自身。